隠居が本業?無一文から新しい働き方を求め「ノマドワーカー」として脱サラ・独立

最終更新日:2023年07月14日

今回取材した西村 治久さんは、自分に合った新しい働き方を求めて無一文で独立。大手企業の雑誌編集者からWebプランナーになり、全国のコワーキングスペースを約3年間旅しました。

現在では自分の家を「ギルドハウス十日町」と名付け、誰でも自由に泊まれる家として開放しています。

今回はそんな少し変わった経歴を持つ西村さんに、独立の経緯やコワーキングスペースでの仕事のもらい方、誰でも泊まれるシェアハウスでの暮らしを取材しました。

目次

隠居が本業とは?誰でも住める「ギルドハウス十日町」の暮らし

ソフトバンクを退職し、新潟のIT企業へ転職

「新しい働き方がしたい」Webプランナーとして脱サラ

全国のコワーキングスペースを旅しながら仕事をもらう日々

24時間365日住み開き…旅の集大成に作った「誰でも住める空間」

辛い日々を脱せたのは「目の前の物事に突き進んだ」から

隠居が本業とは?誰でも住める「ギルドハウス十日町」の暮らし

「隠居が本業」と笑いながら話す西村さんですが、一体どのように生計を立てているのでしょうか。誰にでも開放する家「ギルドハウス」を作るに至るまでの旅の話など、西村さんの独立の流れを伺いました。

「隠居している」とは、一体どういうことなのか知りたいです。

西村さん「今私がいるギルドハウス十日町は、私の家でもあるんです。家にギルドハウスと名付けて、いろいろな方と一緒に楽しく過ごしています。シェアハウスのような共同生活をしていて、住民がギルドハウス十日町の家計にお金を預ける形で運営しています」

住民からはどのくらいお金を預かっているのでしょうか。

西村さん「電気、ガス、水道、Wi-Fiなど込みで1人月4万円ほど預かっています。私、妻、息子のほかに今は2人暮らしているので、月8万円いただいています」

なるほど。ただ、それだけで生計を立てるのは難しいと思うのですが。

西村さん「そうですね。なので最近、正社員になりました。ただ、会社員の仕事はあくまで副業として捉えています。あくまでこのギルドハウスでの暮らしが本業で、その生活の一環として会社員をしています」

ソフトバンクを退職し、新潟のIT企業へ転職

alt ソフトバンクを退職し、新潟のIT企業へ転職

この生活に至るまでに、どのような経験をされてきたのか知りたいです。

西村さん「大学を卒業して、東京でソフトバンクに就職しました。ソフトバンクと言えば今では誰もが知っていますが、当時はほとんど知る人がいなかったと思います。私はそこで雑誌の編集事業をしていて、ライターさんの原稿を編集したり、撮影やコーディネートをしたりしていました」

それが最初の仕事だったんですね。どのくらい勤めたんですか。

西村さん「新卒から10年くらいですね。それから結婚や離婚などいろいろなことがあり、離婚後に付き合った彼女が新潟に住んでいたのをきっかけに新潟へやってきました。

最初は新潟へ遊びに来るような感覚でしたが、美容院で髪を切っていたら美容師さんから「ITの仕事なら紹介するよ」と言われまして。そのご縁で、新潟で転職をしました」

すでにその頃、新潟にもITの流れが来ていたんですね。

西村さん「そうですね。その会社ではホームページを制作したり、携帯電話に関連した企画を考えたりといった仕事をしていました。ライブドアなどITの会社が生まれ始めたホリエモンなど、今をときめく有名人が第一線で活躍していた時代ですね。

私はソフトバンク時代にホームページを作る連載企画の担当をしていたので、自分でもホームページを作ることができたんです。結局、7年ほどその会社で働きました」

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「新しい働き方がしたい」Webプランナーとして脱サラ

7年も勤めたのに、どうして辞めてしまったのでしょうか。

西村さん「東日本大震災の影響が大きいです。将来を不安にさせるニュースが目に付くようになって、これから50歳、60歳とこの仕事を続けていけるのかなと。ただ、不安ではあったものの仕事が忙し過ぎて、自分が何をしたいのか考える余裕もありませんでした。

その一方で東日本大震災でSNSが活躍していたのを見ていたので、携帯端末一つで何か仕事ができるようになる可能性も感じていたんです。それで、いろいろと自分で考える時間を作ろうと、思い切って会社を辞めました」

そこで脱サラしたんですね。

西村さん「今までやってきたことを活かしてITで挑戦しようと思ったのですが、当時は会社を無理やり辞めて迷惑をかけたので、前の会社の繋がりは使えませんでした。

当時、フリーランスの働き方は前職からの繋がりで仕事をもらうことが多かったのですが、自分はもっと身軽な働き方をしたかった。それで最終的には、前職の繋がりを使わずにWebプランナーとして独立しました」

Webプランナーとは、具体的にどんな仕事ですか。

西村さん「こんなホームページを作りませんか?と提案する仕事ですね。最初はカフェで仕事していましたが、カフェだと隣の席の人に話しかけにくいじゃないですか。

一人でカフェで仕事していたら孤独になってしまって、そのとき偶然Twitterでコワーキングという言葉を見つけたんです。コワーキングにはいろいろな人が集まると聞いたので、ひとまず飛び込んでみることにしました」

全国のコワーキングスペースを旅しながら仕事をもらう日々

実際にコワーキングスペースに行ってみてどうでしたか。

西村さん「衝撃を受けましたね。アンテナ感度の高いパイオニアの方々が集まっていて、人数はそれほど多くないものの活気がありました。

今のコワーキングは自習室みたいに静かですが、当時はコワーキングにいる人同士で一緒にランチや飲み会をするほどだったんです。

そういう交流のなかで、自然発生的に仕事が生まれる。私もコワーキングの関係で仕事をもらえるようになり、入り浸るようになりました」

コワーキングで仕事をもらうようになったんですね。

西村さん「それでコワーキングに興味を持つようになって、全国のコワーキングスペースに行くようになったんです。それに、全国を旅するなかでゲストハウスを初めて体験して、人が集まる空間は良いなと思うようになりました。

Webプランナーの仕事に定期収入はなく、金銭的に安定はしませんでしたが、場所を問わずに仕事するスタイルを続けていこうとこのときに決意し、最終的に日本全国訪れました」

すごいですね。旅をしながら仕事をもらう機会もあったのでしょうか。

西村さん「そうですね。コワーキングやゲストハウスで出会った人から仕事をもらったり、あとコワーキングスペースのオーナーに無理を言って、そのスペースでプレゼンをさせてもらったりもしました」

プレゼンとは?

西村さん「コワーキングにはプロジェクターもあるし、いろいろな人が集まっていますから。そこで、私が全国で見たコワーキングスペースの話をして、最後に「このような旅をしている私を応援してくれる方は、カンパをいただけませんか」と。そういうこともやりながら、交通費や旅の資金の足しにしていましたね」

24時間365日住み開き…旅の集大成に作った「誰でも住める空間」

alt24時間365日住み開き…旅の集大成に作った「誰でも住める空間」

面白い経験ですね。旅はどのくらい続けたのでしょうか。

西村さん「3年以上続けて、43歳で新潟に戻りました。旅を続けるなかでいろいろな価値観や生き方、働き方に触れて、最終的に自分の居場所がほしくなったんです。そのいろいろな見聞を集大成させたのが、このギルドハウス十日町ですね」

このギルドハウスは誰でも住めるんですか。

西村さん「はい。ここのコンセプトは「住み開き」で、自宅を無理のない範囲で開放するスタイルですから。24時間365日開いているので、朝起きたら知らない旅人がいることもあります」

面白いですね。ちなみに、このギルドハウスの開業資金はどれくらいかかりましたか。

西村さん「手持ちの50万円だけです。大家さんがすごく大事にされていた家で、水回りの状態が良かった。それに、近くに大家さんの畑があり、以前からここで体を休ませる間に手入れなどをしていたそうです」

なるほど。あと、収入についても気になります。
ソフトバンク時代がやはり一番稼いでいたのでしょうか。

西村さん「ソフトバンク時代の年収は800万円以上で、今は会社の月給が20万円そこそこだと思います。ただ、最初にお伝えした通り会社員はあくまで副業。隠居がメインで、そこに会社員という要素が入ってきただけなので」

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辛い日々を脱せたのは「目の前の物事に突き進んだ」から

今ではかなり理想の生活を叶えられているように見えますが、脱サラ初期の頃は苦労もあったのではないでしょうか。

西村さん「カフェで悶々としていた時期が一番辛かったですね。失業手当をもらっていたとはいえ、東京と新潟を行き来するだけでも交通費がかかりますから。貯蓄はほとんどありませんでしたが、コワーキングにたまたま出会って、目の前の物事に突き進むことで道が開けました」

なるほど。実際に脱サラしてみて良かったことや悪かったことがあれば教えてください。

西村さん「脱サラして悪かったことは、先ほどお伝えした不安の面ですね。良かったことは自分の可能性を広げられたことです。今こうしてのんびりと過ごすことができ、自分の日常を楽しめるようになりましたから」

ありがとうございます。それでは最後に、これから脱サラしたい方へメッセージをお願いします。

西村さん「あれこれ考えると八方塞がりになって、何をして良いのか分からなくなると思います。なのでまずは会社を辞めてから、そこから 何をやろうか考えて行動するのも良いかなと。

考える時間や何かをする時間など、まずは時間を作ってほしいです。それでもし大変なことになったら、ギルドハウス十日町に来てください。ここに来くれば、ご飯でも出しますよ」

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公開日:2023年07月14日