やりたいことをやればいい。日本とアジアを股にかけて楽しく仕事をする秘訣とは? 神谷政志さんインタビュー

公開日:2020年04月08日

小さな飲み屋がひしめき合う新宿ゴールデン街。そこにある1軒のバー「araku」は、来店する客の80%が外国人だ。そこで週1回バーテンをしているのが、神谷政志さんだ。

「僕、ほとんどお酒飲めないんですよね(笑)。でもおもしろいですよ」

神谷さんの本職はバーテンダーではない。現在は高校生や大学生向けの海外研修プログラムを運営してる財団法人で、学生の引率を行う仕事を業務委託で行っている。

また、現在はスリランカで会社を設立するために準備をしている段階だ。

目次

29歳のときに訪れたシンガポールが転機

一人で仕事をすることは精神的にクリーンでいられる

一人でやれるスモールビジネスが基本

日本ではちょっとやそっとじゃ死なない

ビジネスプランやお金がなくても勢いでやればいい

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29歳のときに訪れたシンガポールが転機

神谷さんは、大学卒業後に新卒採用を支援する会社に就職。当時、大学のゼミでキャリア論について学んだ経験から、就職支援業界に興味があったという。

入社直後は、かなり仕事に燃えていたそうだ。

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「入社から5年くらいは、仕事命でやっていました。泊まり込んで仕事している自分が好きみたいな(笑)」

しかし、その後転機が訪れる。5年目のとき、神谷さんは採用事業部の事業部長だった。そのときリーマンショックが起こり、業績が下がってしまう。そして、事業部長から一般社員へと降格となった。

そのとき、神谷さんは退職しようか迷ったそうだが、結局は辞めなかった。そして国内で長期インターンシップを斡旋するという新規事業を立ち上げる。その新規事業をやりながら、今度は学生を海外に連れて行って研修をするというプログラムも手掛けるようになる。

それまで海外にはまったく興味がなかったが、29歳のときに研修プログラムの運営のためシンガポールに訪れたことがきっかけとなり、仕事に繋がっていく。

海外事業を始めたのが7年目くらいでした。海外事業を始めて1年経ち、もっと海外に振り切ろうと思い、インドに5ヶ月行くことにしました。あり余っていた有給消化を午前中の英語留学に、午後はリモートで仕事する海外駐在という無茶な相談を会社にしたらOKをしてもらえたのです。インドにいたらもう海外事業の仕事しかやりたくない!と思ってしまって、5ヶ月経って帰国して、もっと海外事業に集中したいので辞めます!と社長に相談したら、「じゃあ、海外事業部長よろしくお願いします!」と言われて、辞める理由がなくなってしまって(笑)

その後神谷さんは海外事業部に専念。日本の学生10〜20人を、1週間から3週間くらい海外の企業で研修を受けさせるプログラムや、単身の長期インターンシップなどの仲介を行っていた。

当時、海外での研修プログラムを扱う企業が増えてきており、事業のほうも順調だった。しかし入社10年目となる2015年、退社する。

海外事業部を立ち上げたときに、それを独立させるくらいの勢いでやりたいなと思っていました。ただ海外事業部の部下の方が僕より優秀で、その子が引っ張っていく方がいいだろうと思いました。また、採用支援事業の事業部長を引き継いでくれた後輩が二代目社長に就任していたので、「僕のやることはもうないし、今抜けても誰にも迷惑はかからないだろう」と思って、辞めることにしました

一人で仕事をすることは精神的にクリーンでいられる

会社を辞めたとき、神谷さんにはちゃんとしたビジョンがあったわけではないという。海外の仕事をしたいという、漠然としたものしかなかった。しかし、辞めた翌月から仕事が舞い込んでくる。それが、前述した高校生や大学生向けの海外研修プログラムを運営してる財団法人からの仕事だ。

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「今、日本での仕事はそれがメインですね。月1回の会議があって、あとは学生と現地に行ってプログラムを進めるというのが主な業務です」

会社員時代にやっていた仕事の延長線上ということもあり、神谷さんは引き受ける。現在も、日本でのメイン業務となっている。

そのほか「araku」のバーテンダーとしても働いており、会社を辞めてからも充実した生活を送っているという。

「収入は会社員時代の3分の1くらいになりましたけど(笑)。いろいろお仕事のお話をいただくこともあるんですが、結構お断りしています」

もっと収入のいい話もあるというが、「自由を束縛されたくない」という理由で、場所と時間を拘束されるような仕事は断っているという。

「どこか行きたいとか、来ない? って言われたときにノリで行けるほうがいいと思っていまして。僕は海外に行ったことでいろいろチャンスが出てきたので、できるだけ海外に行きたいんです」

現在は、ASEAN諸国に行くことが多いという。会社員ならば、そう簡単に休みを取って海外に行くということはできないだろう。自分一人で仕事をするのはたいへんなことも多いが、精神的にはクリーンでいられると神谷さんは笑って話す。

一人でやれるスモールビジネスが基本

現在神谷さんは、スリランカで会社を設立するための準備を行っている。会社名は「スパイスアップランカ」。ビジネス内容としては、企業の学生向け研修をスリランカで行う際のコーディネート業に加え、日本人向けにスリランカの情報を発信するフリーペーパーやWebサイトの運営をやる予定だ。

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「ゆくゆくはフリーペーパーのほうを主軸にしようと思っています。ただ、あまりビジネスを大きくしたいという欲はないんですよ。スモールビジネスと言っているんですが、自分一人または数人でやれる範囲でいいと思ってるんで」

会社を上場したりするといった欲はあまりない。できることをやっていきたい。うまくいけばラッキー。うまくいかなくてもなんとかなる。そんなポジティブな考え方が、神谷さんの根底にあるのだろう。

ある意味、独立しようという人は楽観的なほうがいいのかもしれない。あまり物事を突き詰めて慎重になりすぎると、些細な失敗に心くじけるようなこともあるかもしれない。

日本ではちょっとやそっとじゃ死なない

会社を辞めるときにも、不安はなかったという。

「自信があるわけじゃないんですし、貯金も潤沢にあるわけではありませんでした。でも僕は独身ですし、背負っているものが少ない。人生なんとかなるんじゃないですか(笑)」

特に日本という国は、一人で生きていくのは比較的楽だと神谷さんは語る。東南アジアの新興国を巡ってきた神谷さんから見れば、日本はとてもいい国だという。

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「僕が行っている国々は、治安が悪くてちょっと油断すると命を落とす可能性もあるわけです。しかし日本はこれだけ豊かで安全な国。ちょっとやそっとじゃ死なないですよ。どうにかなります。そんな日本に生まれたんだから、チャンレジしなきゃ意味がないと思います」

多少の失敗をしても、日本なら生きていける。そう思っているから、神谷さんは日本を飛び出し、海外でチャレンジしようと思えるのだろう。

ビジネスプランやお金がなくても勢いでやればいい

神谷さんが、仕事をする上で一番大切にしていることは「自由であること」だという。

「独立してからは、会社員に戻るということが考えられないですね。好きな仕事しかしていないので、働いている感はなくなりました。特に、海外事業をやりはじめた会社員5年目からは」

やりたい仕事をやっているのだから、苦労だと思ったことはない。会社員時代は、会社のため、後輩のためにがんばっているという感覚だった。しかし、今はがんばらないととか、かっこつけなきゃという気持ちがなくなって、楽になったという。

スリランカに会社を設立しても、スリランカにとどまる気持ちはない。日本、スリランカを拠点として、東南アジア各国を飛び回り、新しい発見をする。それが神谷さんの生き方であり、仕事なのだ。

そうは言っても、なかなか前に進めるものではない。でも神谷さんはやってしまったほうがいいと語る。

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「やりたいならやればいいんじゃないかな。ビジネスプランも、お金も、何もなくても勢いがあれば(笑)」

一人でビジネスを始めるのは、それほど難しいことではない。最低、自分一人が生活できるだけの収入があればいい。それがスモールビジネス。

事業を大きくしたい、いろいろな仕事をしたい。そんな欲がある場合は別だが、自分の好きな仕事をして自由に生きたいというのならば、今の日本ならいろいろな方法があるだろう。

あれこれ考えずに、まずはやってみること。そして、自分の興味があることにどんどん関わっていくこと。そうすれば、自然と自分に合った仕事が舞い込んでくる。

神谷さんの生き方を見ていると、くよくよしている時間がもったいないと感じる。やりたいことをやる。そのシンプルな考え方こそ、一番大事なことなのかもしれない。

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Spice Up Lanka Corporation (Pvt) Ltd.

https://spiceup.jp

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