営業キャッシュフローとは?基礎から学んで理想的な経営を実現しよう

最終更新日:2020年12月17日

企業の経営状態を判断する指標はいくつかありますが、なかでも「営業キャッシュフロー」は確実に押さえておきたい指標です。営業キャッシュフローは現状の分析だけではなく、経営の方向性を見極める際にも役立つので、経営者を目指すのであればきちんと理解しておくべきでしょう。

そこで今回は、営業キャッシュフローの概要や見方、計算方法など、基本的なポイントをまとめました。

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目次

まずはキャッシュフローのおさらい

営業キャッシュフローとは

営業キャッシュフローを見るときのポイント

営業キャッシュフローの計算方法

理想的な営業キャッシュフローとは

まずは間接法を使って、営業キャッシュフローを計算してみよう

まずはキャッシュフローのおさらい

キャッシュフローとは、簡単にいえば会社内のお金の流れのこと。具体的には、会社の収入から支出を差し引いた「手元に残る収支」を指しており、一般的には以下の式によって計算されています。

キャッシュフロー = 会社の収入(キャッシュイン)- 外部への支出(キャッシュアウト)

キャッシュフローの対象に含まれるものは、目に見える現金だけではありません。固定資産や有価証券、借入金など、キャッシュフローには会社内のさまざまな資産・負債が含まれます。

営業キャッシュフローとは

キャッシュフローにはいくつか種類がありますが、本来の営業活動(本業)による収益を伸ばしたいのであれば、「営業キャッシュフロー」に目を向けることが大切です。

営業キャッシュフローとは、会社の本業によって生じるお金の変動を表す指標のこと。もう少しイメージをつかむために、具体的にどのようなものが営業キャッシュフローのキャッシュイン・キャッシュアウトに含まれるのか、以下で一例を紹介しましょう。

  • キャッシュインに含まれるもの…商品やサービスの販売代金(売上)
  • キャッシュアウトに含まれるもの…人件費や地代家賃、仕入れ費など

つまり、営業キャッシュフローは商品やサービスの売上から、本業で発生した各経費を差し引いたものと言い換えられます。

営業キャッシュフローを見るときのポイント

営業キャッシュフローは、ただ計算したものを眺めるだけでは意味がありません。計算結果から自社の現状を冷静に分析し、今後の経営に役立てていくことが重要になります。

そこで以下では、営業キャッシュフローを見るときに意識しておきたい2つのポイントをまとめました。

営業利益とは一致しないことを理解する

営業キャッシュフローは、日々の営業活動によるお金の増減を表す指標なので、なかには「営業利益との違いが分からない…」と悩む経営者もいらっしゃるでしょう。確かに、いずれも営業活動の実態を分析するための指標ですが、営業キャッシュフローと営業利益には以下の違いがあります。

  • 営業キャッシュフロー…実際に受け取った代金など、あくまでも「現金の変動」に着目して算出する指標
  • 営業利益…現金以外の収支にも着目した指標

つまり、企業の営業キャッシュフローと営業利益は、基本的に一致するものではありません。営業利益だけでは企業の実態をつかめないことがあるので、安定した経営体制を整えたいのであれば、営業キャッシュフローについても理解を深めることが重要です。

プラスかマイナスかだけで判断しない

営業キャッシュフローの計算結果によって、企業の経営状態は以下のように変わってきます。

  • 営業キャッシュフローがプラスの企業…本業が順調であり、現金が増加している
  • 営業キャッシュフローがマイナスの企業…本業によって現金が増えていないため、キャッシュ不足に陥るリスクがある

つまり、営業キャッシュフローがプラスであればひとまず安心できますが、プラスの値があまりにも小さい場合は、短期間でマイナスに転じる恐れがあります。また、営業キャッシュフローの合計値だけに着目すると、課題や問題を抱えている項目を見落とす恐れがあるので注意しなくてはなりません。

したがって、営業キャッシュフローはプラス・マイナスだけで判断せず、値の大きさや各項目の数値も細かく確認することを意識しましょう。

営業キャッシュフローの計算方法

営業キャッシュフローの計算方法には、「直接法」と「間接法」の2種類があります。シーンによって直接法・間接法を使い分ける必要があるため、それぞれの計算方法や特徴を以下でしっかりとチェックしていきましょう。

直接法

直接法では、営業活動によって生じた収支ごとに項目を分け、各項目の総額から営業キャッシュフローを算出します。商品・サービスを売り上げたことによる営業収入と、営業において発生した各支出を項目ごとに分けて計算する方法といえば分かりやすいでしょう。

もう少しイメージをつかむために、以下では直接法による計算の一例を紹介します。

主な計算項目 合計(単位:万円)
営業収入 3,000
仕入れによる支出 -1,200
人件費 -1,000
経費による支出 -300
営業キャッシュフロー 500

上記のように、直接法では各収支を細かく計算する必要があります。そのため、実務で使用されるシーンはそれほど多くありませんが、キャッシュフローを細かく把握したい場合に重宝する計算方法といえるでしょう。

間接法

間接法は、当期純利益(※税金控除前のもの)と現金以外の収支項目を使って営業キャッシュフローを計算する方法です。現金以外の収支項目としては、売掛金や買掛金、減価償却費、棚卸資産などが挙げられます。減価償却費、棚卸資産については後述します。

では、実際にどのような方法で営業キャッシュフローを計算するのか、以下で一例を見ていきましょう。

主な計算項目 合計(単位:万円)
当期純利益 700
減価償却費 300
売掛金の増減 200
買掛金の増減 -200
棚卸資産の増減 -450
法人税等の支払い -50
営業キャッシュフロー 500

上記の通り、間接法の計算項目は損益計算書に記載されたものが中心なので、直接法のように各項目を細かく計算する必要がありません。そのため、企業が営業キャッシュフローを計算する際には、基本的に間接法の使用が主流です。

ちなみに、直接法と間接法とでは使用する計算項目が大きく異なりますが、最終的に導き出される営業キャッシュフローは同じ値になります。

間接法におけるプラス・マイナス要因

直接法に比べると、間接法の計算項目はやや複雑に見えるかもしれません。そこで以下では、間接法におけるプラス・マイナス要因を分かりやすくまとめました。

減価償却費

機械や車両をはじめ、企業が長期にわたって使用する高額な資産を購入したときには、耐用年数に応じて費用を分割する「減価償却」を行います。例えば、一般用の小型自動車(耐用年数:4年)を100万円で購入した場合は、この費用を4年間に分けて計上する必要があるので、1年あたりの計上額は25万円となります。

このときの年間の計上額が、「減価償却費」と呼ばれるものです。上記の例の場合、資産を購入してから4年間は25万円ずつを計上することになりますが、この25万円分の支出は実際に発生するものではありません。そのため、間接法によって営業キャッシュフローを計算する際には、この減価償却費はプラス要因になります。

減価償却についてもっと詳しく

棚卸資産

棚卸資産とは、簡単にいえば「在庫」のことです。営業キャッシュフローの計算において、棚卸資産がプラス・マイナスのどちらの要因になるのかは、各企業の状況次第で変わります。

例えば、前期に比べて棚卸資産が減少した場合は、在庫の販売によって現金を得たことになるので、営業キャッシュフローの計算時にはプラス要因となります。一方で、前期から棚卸資産が増加した場合は、増加分の仕入れによって支出が発生しているため、マイナス要因として営業キャッシュフローを計算します。

棚卸資産についてもっと詳しく

売掛債権

売掛債権とは、商品やサービスの売上代金のうち、現時点では販売先から回収できていない代金のこと。具体的には、売掛金や受取手形として損益計算書に記載した金額を指します。

この売掛債権も、企業の状況次第でプラス要因・マイナス要因のどちらになるのかが以下のように変わってきます。

  • 前期に比べて売掛債権が減少した…プラス要因
  • 前期に比べて売掛債権が増加した…マイナス要因

営業キャッシュフローの計算において、売掛債権と棚卸資産はプラス・マイナスを特に間違えやすいので、注意しながら計算を行いましょう。

仕入債務

商品やサービスの購入代金のうち、現時点で支払っていないものを「仕入債権」といいます。買掛金や手形による取引をイメージすると分かりやすいでしょう。

この仕入債権が前期より減少した場合は、代金を支払うために支出が生じたことになるので、営業キャッシュフローの計算においてはマイナス要因となります。一方で、仕入債権が前期より増加した場合は、実際には支出が生じていない状況を意味するので、プラス要因として営業キャッシュフローを計算します。

貸倒引当金

貸倒引当金は、将来的な貸し倒れに備えて事前に計上しておくためのお金です。つまり、貸付をしている取引先などが倒産しない限り、貸倒引当金が増減しても会社内のキャッシュは移動しません。

したがって、営業キャッシュフローの計算においては、貸倒引当金の増減分は以下のように取り扱います。

  • 前期に比べて貸倒引当金が減少した…損益計算書で収益として足した分のみ、マイナス要因として計算
  • 前期に比べて貸倒引当金が増加した…損益計算書で差し引いたもののみ、プラス要因として計算

ちなみに、ほかの引当金(賞与引当金や修繕引当金など)に関しても基本的には貸倒引当金と同じように取り扱うので、合わせて覚えておきましょう。

利息

営業キャッシュフローの計算において、金融機関などから利息を受け取った場合(受取利息)はマイナス要因、利息を支払った場合は(支払利息)はプラス要因として取り扱います。なお、配当金も同じように取り扱いますが、支払配当金に限っては「財務活動によるキャッシュフロー」に計上するケースが一般的です。

ちなみに、キャッシュフローへの計上方法としては、受取利息と受取配当金を「投資活動によるキャッシュフロー」に、支払利息と支払配当金を「財務活動によるキャッシュフロー」に計上する方法も認められています。

法人税など

間接法による営業キャッシュフローの計算では、税金控除前の当期純利益をもとに計算を行うため、法人税をはじめとした税金が差し引かれていません。したがって、最終的に営業キャッシュフローを導き出す際には、各項目の小計から法人税等の支払い額をマイナスする必要があります。

理想的な営業キャッシュフローとは

企業が営業活動に取り組む目的は、会社内のキャッシュを増やすことです。キャッシュ不足に陥ると倒産リスクが高まりますし、設備やほかの事業への投資金をまかなえないので、会社をスムーズに成長させることができません。したがって、理想的な営業キャッシュフローを目指す上で、「営業キャッシュフローがプラスであること」は欠かせない要素といえます。

また、一時的に営業キャッシュフローがプラスであっても、事業には流行やライフサイクルがあるため、同じ事業だけでキャッシュを稼ぎ続けることは難しいでしょう。世の中の企業が長く生き残るには、商品・サービスの高品質化や新分野への参入を積極的に考えることが大切です。つまり、営業キャッシュフローに余裕がある場合は、その余力分を「設備投資や研究開発などの投資に回すこと」が望ましい形になります。

ただし、将来のためとはいえ無理に多額の投資をすると、全体のキャッシュフローが一気に悪化する恐れもあります。将来に向けた投資は必要ですが、あまりにもキャッシュが減ると企業活動に弊害が生じるので、投資をする際には「営業キャッシュフローの余力分から行うこと」を意識しておきましょう。

まずは間接法を使って、営業キャッシュフローを計算してみよう

本業による収益を伸ばしたい企業にとって、営業キャッシュフローは重要な指標になります。そのため、まずは損益計算書の記載内容から計算できる間接法を使って、自社の営業キャッシュフローを計算してみましょう。

その結果、営業キャッシュフローに余裕があることが分かったら、その資金の最適な使い道を模索することが大切です。ただキャッシュを貯めておくだけでは会社の成長は見込めないので、特に「余剰資金を投資に回すこと」は積極的に検討していきましょう。

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公開日:2020年11月18日