9割の反対と1割の賛同。「食器のファッション誌」というブルーオーシャンを切り開く徳田吉範さんインタビュー

公開日:2016年08月28日

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「うつわさがしをもっとやさしく」をテーマにした、テーブルウェアサイト「テーブルライフ」。きれいな料理と食器の写真を閲覧したり投稿することができる。2016年4月28日にサービスインしたばかりの、まだ若いサイトだ。

食器を扱うサイトは、通信販売や小売店のサイトを除くと、まだ数は少ない。しかし、食器は生活には欠かせないもの。もっと手軽に食器を見たり選んだりできれば。そのような潜在的なニーズに応えるサイトだ。

そのテーブルライフの代表である徳田吉範さんは、ブリヂストンという大企業出身。自動車やバイク、自転車のタイヤやスポーツ用品の開発を行う会社として有名だ。

そんな大企業から、食器を扱うサイト運営者に転身した徳田さんには、どのような想いがあったのだろうか?

F1への憧れからブリヂストン入社を決意

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徳田さんは、早稲田大学理工学部を経て、東京大学の大学院に進学。資源工学を専攻し、リサイクリングのモデルやシミュレーションについて勉強をしていた。

もともとF1が好きで、F1を応援したいという想いから関連した企業への就職を希望。いくつかの候補からブリヂストン入社を決意。「F1の開発にも携われるかも」という気持ちがあったそうだ。

2001年にブリヂストンに入社。タイヤの新製品の市場調査のために3年間イタリア・ローマに勤務するなど、さまざまな経験を積み、念願のF1関係の仕事にも就くことができた。

徳田さんにとってローマでの3年間は、人生のターニングポイントになったようだ。

ターニングポイントは「読書との出会い」と「起業論」

「ローマへ転勤が決まったとき、友人から“ローマに行くなら絶対これを読んだほうがいい”と勧められたのが、塩野七生さんの小説『ローマ人の物語』でした」

徳田さんは、読書も歴史も嫌いだったが、勧められたからという理由でイタリアに『ローマ人の物語』を持っていく。そしてイタリアに住み始めてから1年半後に読み始めたところ、そのおもしろさに魅せられて読書に目覚める。

37歳にして読書に目覚めた徳田さんは、日本帰国後に読書が趣味になった。そして、ビジネス書などを読むようになり、FP(ファイナンシャルプランナー)の資格を取得。しかし、もっと本格的にビジネスについて学びたいという気持ちが大きくなり、MBAの取得を目指しビジネス・ブレークスルー大学大学院(BBT)に通い始める。

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「そのときは、将来的に管理職になったときに役に立つかなというくらいの気持ちでした。独立するなんて考えてもいませんでした」

しかしBBTでの必修授業「起業論」が、徳田さんの人生を大きく変える。起業をするためにビジネスプランなどを考える授業を通じ、起業するおもしろさを感じて独立を決意する。

実際に会社を辞めることは2、3年先と考えていたが、さまざまな条件が重なり、BBT卒業より少し前のタイミングで退社。BBTの卒業研究として食器をメインにしたビジネスプランを立案しており、それを元にテーブルライフを設立することになる。

徳田さんにとって、『ローマ人の物語』とBBTでの起業論との出会いが、人生におけるターニングポイントと言えるだろう。

身近な応援が独立を後押し

会社を辞めたときには、すでに結婚し、お子さんもいたという。普通ならば、家族があれば安定した仕事を選ぶだろう。しかし、独立という道を選んだ。そのときに不安はなかったのだろうか。

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「ほとんどありませんでした。BBTの同級生と起活会(きかつかい)というグループを作り、起業したことがある人と起業したい人とのトークイベントを開催していました。簡単に言えば、アメトークのような形式で(笑)。これが起業論の先生にすごく好評で、先生が“BBTのなかに起業家を支援する組織がないのはおかしい”ということで、インキュベーションセンターを作ることになったんです。そのおかげでネットワークが広がって、後に引けなくなったという(笑)」

起活会のイベントを通じ、起業への支援をしてくれる人が現れる。これが独立への不安を軽くしてくれた。家族の応援もあり、思い切って飛び出すことができたという。

一人での起業は不安だが、応援してくれる人がいるといないとでは、気持ち的にも大きく違う。それが先生や家族といった身近な人物ならば、なおさらだろう。

テーブルライフは「食器のファッション誌」

テーブルライフは、徳田さん曰く「食器のファッション誌」とのこと。しかし、最初のアイデアは食器のレンタルサービスだった。これは、徳田さんの奥さんが食器が好きなことから得たもの。その後、アイデアを煮詰めていった結果、現在のような読者参加型の写真共有サイトという形になっていった。

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「ファッション誌は、モデルさんの着ているものの詳細が載っていますよね。しかし料理写真は食材や調理方法については記載されていても、お皿などの食器については記載されていません。お皿が気になっても、どこのメーカーのなんという食器かはわからないのです。それはもったいないと思いました」

テーブルライフは、食器をファッション誌と同じレベルで情報を提供することが前提。そのため、写真を投稿する場合は食器の情報を付加する仕組みとしている。

一般の読者はもちろん、食器メーカーや窯元、小売店などが投稿してもOK。食器の販売リンクを貼る場合とそのリンクをクリックした場合に、課金が発生するシステムとなっている。

現在は写真の投稿・共有によるSNS的な側面と、投稿された写真が並ぶ雑誌的な側面、そして食器にまつわる記事がコンテンツの柱だ。

テーブルライフの事業を通じて地方の窯元などともいい関係を築いており、コラボレーションなども行っている。徳田さん自身、有田焼の窯元などを回っているそうだ。

その他、食器関連の展示会などにも通い、直接メーカーの担当者などに営業をするということもあるという。

9割の人が反対するビジネスは成功する

テーブルライフのコンセプトは、徳田さんの奥さんが食器好きであることから発想を得ていると先述した。しかし、食器のレンタルビジネスを始めたいと伝えたところ、奥さんの反応はよくなかった。

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「食器のレンタルは私は使わないというんですよ(笑)」

しかし、メガネのネット通販を行っている『Oh My Glasses TOKYOオーマイグラス』代表の清川さんのセミナーで「9割の人が反対するビジネスモデルをやれ」と言っていたことを思い出す。

「みんながいいと思ったものは誰かがやっているし、いち早く始めたとしてもすぐに競合が増えてしまう。そのなかで勝ち残るのはたいへんですよね。だから、みんなが反対しても1割の人が絶賛するようなものをやるのがいいということなんです」

そのため、食器のレンタルについて奥さんに反対されたときに逆に「これは来た!」と思ったそうだ。特に、料理や食器、インテリアの好きな女性などが賛同してくれたことにより、自信は深まったという。ビジネスのアイデアを練るときに、とても参考になる考え方だ。

そして、現在のようなビジネスモデルに落ち着きサービス開始となるわけだが、順調とはいかなかったようだ。徳田さんは、Webサイトの構築についての知識は皆無。外注でサイト制作を進めていたが、BBT内で募集をかけて元システムエンジニアの協同創業者を獲得する。

「彼はシステム設計全般を担当してくれています。外注先への支払いが節約できた上に理想の形になったので、結果的によかったと思います」

それでも、サービスイン時の予定と比べ、2ヶ月ほど遅れていると感じている。これからが本番といったところだ。

生活すべてがビジネスに繋がる

起業する前と現在では、仕事に対する意識が変わったと徳田さんは語る。

「いい意味で、プライベートと仕事の区別がなくなりました。プライベートで旅行などに行っても、全部ビジネス視点で見ているんです。自分が楽しければみんなも楽しいだろうとか、こういう条件が整ったらもっと楽しくなるはずだとか、生活全部が取材というか。僕の中に経験値を貯めているという感じなんです。それが楽しくてしょうがない状態ですね」

見たり感じたりすることが、全部将来の自分に繋がっていき資産となっていく。その感覚があるからこそ、生活すべてが無駄に感じることがない。

「今は食器のビジネスをやっていますが、僕は野球やものづくり、教育などにも興味があります。いつかそういう事業をやりたいと思っています」

ビジネスのアイデアが思いつくものの、今は実現している時間もお金もない。「宝くじが当たったら、誰かにアイデアを渡してやってもらいたいくらいです(笑)」と徳田さんは笑う。その笑顔から、現在とても充実していることが伺える。

ビジネスに失敗しても経験が残る。だからノーリスク

起業をする上で、大事なこととはなんだろうか。徳田さんは「まず、起業する人の世界に足を踏み入れてほしい」と言う。

「起業家が講演するセミナーなどには、投資家の他に起業家や起業したい人が集まっています。そういうものは数多く開催されているので、足繁く通ってみてほしいですね。そして、そこで自分のアイデアを発信することが重要です。まずこちらからボールを投げなければ、キャッチボールは始まらないんです。事業アイデアや関心のある分野があればそれをとにかくいろいろな人に話しましょう。そうすることで、興味を持つ人が現れたり、誰かを紹介してくれたり、情報が集まってくるようになります」

そうは言っても、起業をして失敗したらと考えると、なかなか一歩が踏み出せないだろう。しかし、起業はノーリスクだと語る。

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「経営者の方と話をしていると、「成功すればお金が儲かるけれど、失敗したら経験が儲かる」という考えをすべきだと言う人が多いんです。確かにサラリーマンをやっていたら経験できないことばかりです。その経験を必要としている人が絶対いる。仮に事業を失敗しても、誰かが自分を必要としてくれるはずだと思ったら、気持ちが軽くなりました」

事業に失敗をしても、起業をした経験、営業や資金調達の経験、採用の経験などが貯まっていく。それはサラリーマンでは経験できないものばかりだ。その貴重な経験ができるのだから、起業をすることはプラスしかない。その経験は、たとえ事業を失敗しても消えることはない。

その経験を活かすことができる場は必ず訪れる。そう考えれば、起業を恐れる必要なんて何もないのだ。

ブルーオーシャンをビジネスの方程式で切り開く

最後に、徳田さんにテーブルライフの今後の展望などについてお話を伺った。

「今はSNS的な要素が強い仕組みですが、今後はC to Cの方向になっていけばいいなと思っています。ユーザーとユーザー同士が食器の貸し借りや物々交換などをしたりできればいいですね。また、僕がコーディネートマーケティングと呼んでいるんですが、食器単体ではなく、そこに盛りつける料理や、カトラリー、テーブル、テーブルクロス、部屋全体のインテリアまで含めて見せることで、食器だけの写真では買いづらかった層が、具体的な使い方を提示することで買いやすくなるのではないかと思っています」

現在は、洋服やルームインテリアをトータルコーディネートをして見せ、そのなかのものを売るというビジネスが流行りつつある。それを食器の世界にも広げていきたい。徳田さんはそう考えている。

また、食器の流通も変えていきたいと話す。

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「食器の流通構造は、産地問屋と消費地問屋、最低2つを通さなければいけません。しかし、うちのサイトを通じて窯元と消費者、小売店と消費者、窯元と小売店が直接繋がるようになればいいなと」

窯元や作家が販売チャネルを持つのは難しい。そこで、テーブルライフを通じて直接消費者と繋がることをできるようにすることが、裏のミッションなのだ。

普通の経営者ならば、このようなビジネスプランをこういう場で話すことはないのかもしれない。しかし徳田さんは、持っているビジネスプランはどんどん人に話す。

今までも、そうして「食器のファッション誌」というニッチなビジネスを切り開いてきたのだから、当然のことなのだろう。

9割の反対と1割の賛同。そのビジネス方程式に当てはまれば、何も怖いものはない。徳田さんは、食器業界というブルーオーシャンを、テーブルライフという船で漕ぎだしたばかり。その先にはどんな景色が待っているのだろう。

株式会社テーブルライフ

https://table-life.com/

ビジネス・ブレークスルー大学大学院

http://www.ohmae.ac.jp/

Oh My Glasses TOKYO

https://www.ohmyglasses.jp/

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