元弁護士が飲食業で独立!安定を捨て「アフリカ進出&キッチンカー開業」で脱サラ
最終更新日:2023年05月26日

数ある職業のなかでも弁護士といえば、「安定」や「高収入」というイメージがあるかもしれません。山田 智信さんはそんな弁護士の仕事を辞めて、今では日本とアフリカで合わせて5つの飲食店を経営しています。
今回は、「アフリカ進出はほぼ思いつき」と話す山田さんに、弁護士を辞めた理由やフランチャイズ・個人での飲食店開業、さらに海外進出を果たした驚きの方法などを取材しました。
飲食店経営や多店舗展開に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
国内外で5店舗の飲食店を経営!弁護士経験もある異色の経歴
飲食店の知識ゼロからお店を始めるだけでもかなりの勇気が必要ですが、日本のみならずアフリカにも進出した驚きの行動力を持つ山田さん。一体どのような経緯で独立したのか、詳しい話を伺いました。
経営している飲食店について教えてください。
山田さん「5店舗経営しており、1店舗目がウイスキーやカクテルをメインに扱うスタンディングバー。2店舗目はテキーラやメスカルなどメキシコの蒸留酒を扱うバーで、3店舗目は六本木にある日本料理店です。
そして4店舗目が宮城県と山形県をメインに出店しているキッチンカーで、5店舗目が西アフリカのブルキナファソという国で経営しているカフェです」
出店方法や場所、ジャンルがさまざまですね。もともと山田さんは弁護士をしていたと聞きましたが。
山田さん「25歳から9年間、徳島県で弁護士をしていました。ただ、弁護士をするなかで、クライアントからいろいろな相談を受けても「自分には社会経験がないから当事者の気持ちがわからない」と感じることが増えてきてしまったんです。それで、いろいろな経験を積んだほうが良いのではと感じて転職しました」
なるほど。弁護士の次は何の仕事を始めたのでしょうか。
山田さん「建設業で庶務を2年半、市役所で公務員を4年間勤めてから独立しました。独立したのが3年前で、40歳か41歳の頃です」
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フランチャイズで飲食店を開業するが、オープン直後にコロナ禍…
3年で5店舗とは早いですね。1店舗目はフランチャイズとのことですが、もともとフランチャイズに興味はあったのでしょうか。
山田さん「最初は全く興味がなかったのですが、同じく独立を目指す知人から「フランチャイズのカフェってどうなんだろう」と言われたのをきっかけに選択肢として思いつきました。
実際にいろいろなフランチャイズ本部が集まるイベントに行ってみたら、今私が経営している飲食店の担当者の雰囲気がとても良くて、それで加盟を決めた感じです」
山田さんは飲食業の経験がありませんよね。独立前にどのような準備をしたのか知りたいです。
山田さん「蒲田の居酒屋で半年ほどバイトをしました。当時は34歳で、バイトをしたいと言っても怪しがられて、どこもなかなか雇ってくれなかったんですよね。あとはウイスキーの入門本を買って勉強したり、バーを1日1~2件巡ってその街の人通りを計測したりしました」
物件は自分で決めたのでしょうか。
山田さん「自分で探しました。飲食店専門の物件情報を調べましたがなかなか良い物件が見つからず、4ヵ月目にようやく見つけたのが今の中野の物件です」
その後すぐにコロナ禍になったかと思います。開業してみてどうでしたか。
山田さん「コロナ禍が始まったのは、開業して2週間後ですね。会社を経営する以上、こんなのは当たり前のことだろうと思っていました。リーマンショックや東日本大震災など、いろいろな環境の中でやっていくのが経営だろうと。逆に「これは試されているな」という感覚だったかもしれません」
資金が足りない…低資金で始められると「キッチンカー」に挑戦
ポジティブですね。それでは、開業資金について教えてください。
山田さん「開業資金は弁護士時代の貯金を使いました。ただ、実はそんなに大きな金額はかかっていません。自己資金が1,000万円で、あとは政策金融公庫からの借り入れが1,000万円です。内装費が600万くらいで最も高くて、さらに敷金、フランチャイズの加盟金、お酒の仕入れ代、什器・備品費、当面の運転資金などがかかりました」
2店舗目以降も自己資金で開業したのでしょうか。
山田さん「はい。2店舗目は居ぬき物件を使ったので200万円もかかりませんでしたが、3店舗目の時点でお金が尽きました。もともとお店を拡大するのが目標だったので4店舗目も考えていましたが、もうお金はあまり使いたくない。
そんなときに、1店舗目のフランチャイズがキッチンカー事業を始めると聞いて「やらせてください」と名乗りを上げました」
確かに実店舗よりキッチンカーのほうが出費を抑えられそうです。しかしなぜ、東北で開業したのでしょうか。
山田さん「私はずっと、これから人類はもう一度移動生活を始めるのではと思っていたんです。今は都市に人口が集中しているけれど、徐々に農山村や漁村にまた人口が移動していくのではないだろうかと。
インターネットの普及で定住の必要性は下がっていきますから、それを見越して都市部ではない市場で商売をしてみたかったのです」
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アフリカ初渡航でそのまま物件を契約!その驚きの方法とは
日本で着々と店舗数を増やしながら、さらにアフリカにも進出していますね。
山田さん「もともと海外へ進出したい気持ちはありました。アフリカを選んだのは、出店費用が安くてこれから経済発展する場所だから。
ほぼ思いつきで行動に移しましたが、実際に行ってみたら現地の方の人柄が本当に良かったんです。1回目に下見へ行ったときに、物件を見つけてそのまま決めてしまいました」
しかし、そんなにすぐに契約できるものなのでしょうか。
山田さん「私はフランス語が分からないので、しっかりと契約書を読んで契約できたかと言われるとそれは「ノー」です。
町をぶらぶら歩きながら、知り合った人に「ここで店しようと思っているんだよね」とスマホの翻訳アプリを使ってやりとりするなかで、観光ガイドを名乗る青年と知り合いました。
それで彼の原付に乗せてもらって街中をぐるぐる回っていたら、空いてそうな店を見つけて、そこでオーナーを呼んでもらって契約したという流れです」
確かに不可能ではないですが、すごい話ですね…。
山田さん「実際にお店を始めてみたら、開業後に「営業許可必要なんですけど」と言われ、慌てて手続きするなんてこともありましたね。
業務委託ではなく完全に従業員として働いてもらっていて、従業員には売り上げと支出をノートに書いてもらい、その写真をスマホで毎日送ってもらっています。
これからは、キッチンカーとアフリカのお店を主軸にして会社を大きくさせたいですね」
4つの事業で赤字…しかし「どのビジネスも辞める気はない」
アフリカのお店の売り上げを知りたいです。
山田さん「今のところ売り上げは全くありません。日本のテイストが全く出てないので、現地の人たちから見ても周りの店との違いがさっぱり分からないのでしょう。
1店舗作るのに大体20万円かかって、1ヵ月あたりの固定費が従業員の給料16,000円と賃料が月10,000円。ほかに原材料などを含めると、赤字になります」
物価の低いアフリカだと出費が安く済むんですね。
ちなみに5つの事業のうちどの事業が黒字化していますか。
山田さん「キッチンカーだけです。全体で見たら赤字で、毎月100万円、150万円と減っています。借り入れが2,700万円もあるので、私も今バイトをしていますから」
大きなお世話ですが、何か事業を辞めるのはダメなのでしょうか…。
山田さん「その選択肢はないですね。採算が合わないからどこか閉めますというのは、従業員の士気に関わりますから」
なるほど。ちなみに年商・年収はどのくらいですか。また、弁護士時代の年商も教えていただけると幸いです。
山田さん「年商は5店舗で2,500万円で、年収は役員報酬などを含めて300万円ほどです。弁護士を辞める直前の年が最高年収で、その年は全体で2,000万円くらいでした。もう弁護士を辞めてから、多分2億円ぐらい損してますね」
経営者を経験したことが、弁護士に戻っても役に立つ
山田さんは最終的にまた弁護士に戻りたいとのことですが、今の経験は役に立ちそうですか。
山田さん「そうですね。弁護士時代、行き詰まった会社の社長さんから「先生、何とかなりませんか」とよく相談を受けることがありました。こういった相談では、真っ先に倒産が思い浮かぶもので、私も昔は自己破産のアドバイスをすることが多かったです。
ですが、今の私だったら全然違うアドバイスをすると思います。私は残金20万円から何とかなったので、選択肢としてすぐに倒産を持ち出すことはないでしょう。「諦めるか諦めないかはあなたが判断するべきことだけど、何とかなるかもしれないよ」と言うと思います」
社長側の気持ちが分かるようになったということですね。
それでは最後に、脱サラして良かったこと、悪かったことを教えてください。
山田さん「良かったことは、やはり楽しいことですね。キッチンカーを出したいと思えばキッチンカーを出せるし、アフリカに行きたいと思えばアフリカに行ける。会社の経営では、自分の思ったことを実現できます。それに飲食業では、お客様がみんな笑顔になって帰ってくれるのもうれしいです。悪かったことといえば、お金が全然ないことですかね」
貧乏になったと話しながらも、笑いながら「脱サラに後悔はしていない」と話し、会社経営を楽しんでいる山田さん。
最後には「諦めなければ良いことがある可能性もそれなりにある」と、これから脱サラを目指す方へ前向きなメッセージをくれました。
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公開日:2023年05月01日