まばたきで写真が撮れる新しい撮影の「習慣」を作り出す。株式会社BLINCAM CEO高瀬昇太さんインタビュー

公開日:2016年10月07日
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まばたきをすると写真が撮れる。そんな夢物語のような製品を本気で作ろうとしているのが、株式会社BLINCAMのCEO、高瀬昇太さんだ。

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高瀬さんが手がけるデジタルカメラ「BLINCAM」は、クラウドファンディングのMakuakeで資金調達を実施。目標額100万円のところ、2600%を超える2643万8000円の支援を達成した。2000%を超えることは、Makuakeでもそれほど多くない。それだけ、BLINCAMが期待されているということだろう。

今回は、高瀬さんに起業までのいきさつや、BLINCAMへの想いなどについてお話を伺った。

英語好きの文系人間が「手に職をつける」ために理系へ

高瀬さんは滋賀県出身。高校くらいまでは、英語が好きな、どちらかというと文系寄りの学生だったという。「英語ができたほうが就職にも役立ちそう」という、実利的な考え方があったようだ。

しかし関西大学では計算機科学を学ぶ。文系の人間ながら理系に進んだのは「手に職をつける」という意識があったようだ。その後、大学は中退しニューヨーク州立大学に入学。心理学を専攻する。「やっぱり英語が好きだったので、海外で英語を学びたかった」とのこと。

2008年に帰国。企業内のシステムを構築するシステムインテグレーターの会社に就職。SEとして働くこととなる。しかし、下請け中心の仕事であることに疑問を感じ始め、2012年に外資系医療機器メーカーへ転職。社内SEとして働く。

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「いわゆるSI屋から見たら、外資系の会社がキラキラ輝いて見えたんですよ(笑)。中学生から見たら高校生が大人だなーって感じるのと同じ感覚です」

ここまでの高瀬さんは、いわゆるサラリーマンとして働くことしか考えていなかったという。起業するということは、まったく頭になかったようだ。

BBTとスタートアップウィークエンドが人生のターニングポイント

そんな高瀬さんの人生が変わるのは、MBA取得のために通い始めたビジネス・ブレイクスルー大学(BBT)への入学だ。

「BBTに通い始めたのは、MBAを学んで出世しようというのが主な理由です。外資系の会社だったので、上司が結構MBAを持っていたんですよね」

BBTにはさまざまな人がいる。多いのが、大企業の中間管理職の人だ。高瀬さんと同じように、社内での出世のためにMBAを取得するのが目的だ。しかし、そのような人たちに違和感を感じていたという。

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「彼らは頭もいいし、かっこいい事業計画書を書きます。一方で起業するつもりはないので、その事業計画も実行されないままになります」

高瀬さんは、BBTに通いながら、起業を体験できるイベント「スタートアップウィークエンド」に参加。そこで起業に対するエネルギーのようなものを感じる。

「スタートアップウィークエンドは、ちゃんとしたビジネスモデルはないけれども、どんどん動いて作って試してというような、若いエネルギーがあると感じました。BBTにはいいアイデアがあるのに実行されない。スタートアップウィークエンドは行動力がある。それなら、BBTでスタートアップウィークエンドをやればいいのではと思ったんです」

高瀬さんは、BBTでスタートアップウィークエンドを行うことを発案。運営側の人員不足もあり、ファシリテーターとなる。

ファシリテーターとは、企画立案や司会進行などを行う役目だ。イベントを通じてスタートアップのCEOなどに話を伺う機会が増える。人脈も広がっていく。高瀬さんの中で「起業」という概念が大きくなり始めていた。

「スタートアップに興味がある人から見たら、スタートアップのCEOがすごく輝いて見えるんです。そうなると、どうしたらなれるんだろうと考えて、少しずつ意識が変わってきましたね」

なんでこの仕事をしているのか。葛藤する日々

BBTに通い、スタートアップウィークエンドに関わるようになる以前から、高瀬さんは葛藤を抱えていた。なんでこの仕事をしているんだろう。そんな疑問を常に抱いており、同僚や上司に「なんでこの仕事をやっているんですか?」と質問して回っていた。

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「なぜこの会社にいるのかと質問すると、それらしい言葉は返ってくるんです。いい会社でしたし、優秀な人も多かったんですが、根本的な部分で“なぜこの会社にいるのか”というところについては、もう一つしっくり来なかったんです。」

当時を回想して「とても鬱陶しい人だったんじゃないですかね」と高瀬さんは笑う。しかし、「働く」ということの根本的な部分を自問自答した結果、会社にいる必要はないという答えがぼんやり浮かび始めた時期でもある。

そして、BBTとスタートアップウィークエンドが、高瀬さんを起業への道に向かわせた。

参入障壁の高いハードウェアだからこそ勝負できると思った

2015年4月。高瀬さんはIoTをテーマにしたスタートアップウィークエンドのファシリテーターを務める予定となっていた。しかし、自分で起業案を考えて参加しようと決意。ファシリテーターを交代してもらい、一参加者としてアイデアをピッチした。

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「Webやアプリといったサービスはいろいろ出てきていましたが、日本ではIoTやハードウェアのスタートアップはまだ黎明期。これから伸びそうだなと感じていました。また、ソフトウェアに比べてハードウェアは当然たいへんなことが多いのですが、いったんチームを作ってしまえば、簡単に真似できないと思ったんです。だから、逆にちゃんとやれば成功するのではと思いました」

高瀬さんは、自分の体験から「まばたきで写真を撮る」というハードウェアを思いつく。自分が見たままのものを、その瞬間に撮ることができるもの。結果として、眼鏡に取り付けるデバイスとなる。それがBLINCAMだ。

もちろん高瀬さんは、ハードウェア開発の経験はない。そこで、エンジニアなどを集めてチームを結成。このあたりは、プロダクトマネージャーだった会社員時代の経験が活きていると言える。

前述したように、このBLINCAMはMakuakeで2600万円以上の資金調達に成功。現在製品化に向けて開発中だ。

不安の解消をするために「リスクの分解」を実行

前職を辞めるときは、高瀬さんはすでに奥さんや子供がいた。通常、家族がいれば安定した職を辞めるというのはなかなか決断できるものではない。しかし、高瀬さんはそれほど不安を感じなかったという。

それは、「リスクの分解」を行ったからだ。

高瀬さんは、会社を辞めようと計画してから、不安材料をひとつひとつ洗い出し、それらをどうしたら解決できるか、シミュレーションをしていた。

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「給料がなくなっても、ここまでは失業保険が入る。嫁が働いているからその期間はなんとかなる。それ以降は、個人事業主としてSEの仕事を受けて収入を得る。週5日働いていたのを週3日にして、残りの時間をBLINCAMに当てようと。リスクを分解してアクションプランに落とし込んでいけば、不安はなくなりますよ」

実際、高瀬さんは外資系医療機器メーカーにいたときから、BBTやスタートアップウィークエンド関係で知り合った人にそれとなく営業をしておき、会社を辞めたあともSEの仕事が受けられるように準備をしていたという。

貯金があれば、その貯金も計算に入れることができるだろうし、一人になることが不安であれば、仲間を見つけておけばいい。不安解消のためにやらなければならないことを具体的に上げて実行すれば、それはもう不安ではない。

「起業するというと、何かすごいことのような感じですが、ちゃんと考えれば問題ないですよ。不安を感じるのは、考えていないからじゃないですかね」

「儲かりそう」では成功できない

高瀬さんが、起業するにあたって重要だと考えているのが「モチベーション」だ。いくら成功しそうなアイデアが浮かんだとしても、それが自分のモチベーションに直結していなければ成功しないという。簡単に言えば「儲かるからやろう」ではダメということだ。

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「おもしろそうだからやってみようだと、毎日忙しくて結局やらないんです。強烈な原体験や身近なものと結びついていると、必死でやるんです。自分の想いやストーリーと結びついていると自分自身を後回しにしないんですよね」

高瀬さんがこれまで会ってきたスタートアップのCEOのなかには、子供のときに大怪我をして医師に世話になったことから、医師と患者を結ぶサービスを始めた人や、激務のなか駅で倒れたことをきっかけに、遊びの情報を共有するサイトを作っている人もいるという。

高瀬さんにとっては、「子供の日常の一瞬を見たまま撮影したい」という願望が、BLINCAMのモチベーションにつながっている。

「子供の写真を撮りたいと思ったときに、スマートフォンやカメラを取り出すのがめんどうで。カメラを向けたら向けたで、相手も構えるので不自然な写真になる。普段見ている瞬間を気軽に撮れるツールはないなと思って、BLINCAMを思いつきました」

「子供は1年経ったらおおきくなっちゃいますからね」。現在4歳のお子さんがいる高瀬さんにとっては、お子さんの成長は自分の生活に密着したもの。モチベーションの原動力としては充分すぎるだろう。

世界の写真の常識を塗り替えるかもしれないBLINCAM

高瀬さんは、起業する際の不安解決策として、「リスクの分解」のほかに「人に話を聞くこと」を挙げた。

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「何が不安なのか自分でもわからないときは、いろいろな人に聞いてみたらいいと思います。僕は、うざいと思われるくらい聞いていると思いますよ(笑)。起業している人のなかには、起業していない人を下に見る可能性もありますが、別にいいじゃないですか。誠心誠意、こういうことをしたくてこう考えていますと言えば、親身になってくれますよ」

いろいろな人に“うざい”と思われるくらい話を聞いて起業した高瀬さん。起業後は楽しいという。

「会社には、しがらみがあったり、やりたくないこともやらなければならないということがあるじゃないですか。今はそういうプレッシャーがありません。基本的には楽しいですね。当然会社にまつわる細々とした雑務がありますし、プレッシャーになることも多々ありますが、自分の会社のことですから。集まってくれている仲間も、みんな楽しんでやっていると思います。」

BLINCAMは、これから本格的な開発に入り、年末に支援者への製品送付を行う予定となっている。

最終的には、カメラを構えて写真を撮る習慣を、まばたきによって見た瞬間を撮影するという習慣に変えていきたいと話す。その一方で、撮影した大量の写真を心地よく見られるようにするアプリの開発も行っていく予定だ。

「スマートフォンなどに入っている大量の写真のなかから、サムネイルを頼りの探すのではなく、見たい写真をすぐに見られるようなシステムにしたいですね。出張中に子供のことを思い出したときに、子供の写真だけが抽出されるような」

まばたきで写真を撮るだけではなく、見たい写真を快適に見るところまでが、BLINCAM。もしかしたら、高瀬さんは世界の写真撮影の常識を変える発明をしているのかもしれない。

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株式会社Blincam

http://www.blincam.co/

BlincamのINDIEGOGOはこちら

https://www.indiegogo.com/projects/blincam-taking-a-picture-with-a-wink-camera-photo/x/14695924#/

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