開業資金と運転資金はいくら必要?内訳や運転資金の計算方法を紹介

公開日:2022年05月30日

開業に興味を持っている人のなかには「開業資金と運転資金がいくら必要か分からない」「運転資金とはそもそも何か知りたい」と悩んでいる人もいるかもしれません。運転資金は開業後に事業を続けていくのに欠かせない重要な費用です。

本記事では、開業に必要となる開業資金と運転資金の金額や、運転資金の内訳など、資金に関する基礎をまとめています。ぜひ最後まで読んで、開業計画を立てるときの参考にしてください。

フランチャイズを探してみる

目次

開業資金と運転資金の違い

運転資金の内訳

運転資金の項目例

開業資金中の運転資金を計算する流れ

開業資金と運転資金の目安

金額シミュレーションをして開業資金と運転資金の計画を練ろう

開業資金と運転資金の違い

開業資金と運転資金の違い

開業資金とは開業時に発生する一時的な費用を指し、設備資金と諸費用に大別されます。設備資金は、機械や備品の導入にかかる費用のことです。諸費用は、開業前に購入した備品代や登記のために支払ったお金が該当します。日本政策金融公庫の創業融資制度を利用するのなら、「自己資金」も開業資金に含みます。

一方で運転資金とは、事業を継続するために必要となるお金を言い、人件費や光熱費などが挙げられます。運転資金が尽きると資金がショートし、事業の失敗に直結します。つまり、事業を成功させるには、豊富な運転資金を保有し計画的にお金を管理することが大切です。

適切な運転資金を準備するために、次の章で解説する運転資金の内訳や項目を理解し、資金に関する知識を深めていきましょう。

運転資金の内訳

運転資金(ランニングコスト)は、固定費と流動費の2種類に分けられ、毎月支払いが発生する資金です。それぞれの性質やどのような費用を指すのかなど、内訳の概要を確認していきましょう。

固定費

固定費は売上と連動しない費用で、基本的に金額の大きな変動はありません。たとえば、以下のようなものがあります。

  • 人件費
  • 物件賃貸料
  • 水道光熱費
  • 支払利息
  • 減価償却費
  • リース料

「売上と連動していない=売上が上下しても金額が変動しない」ことを意味します。つまり固定費の割合が大きいと、収入が減った月の負担が増えるため、安定した売上を毎月確保しなければ事業の継続が困難となります。

開業してから数ヵ月は、売上が立たないケースも少なくありません。資金繰りがショートしないよう、経営が軌道に乗るまでは、固定費をなるべく減らしておくと良いでしょう。

流動費

流動費とは売上と連動している費用を指し、代表的なものは次の通りです。

  • 原材料費
  • 仕入原価
  • 販売手数料
  • 消耗品費

固定費と違い流動費は売上と連動しているため、売上が増加するほど費用も高額になり、売上が少なくなれば同じく費用も減ります。固定費を抑え、変動費の割合を大きくしている事業は安定しやすい傾向にあります。流動費を削減するには、在庫管理で無駄をなくしたり、仕入れ単価を減らしたりする方法が有効です。

運転資金の項目例

前章では、運転資金の大まかな構成を解説しました。事業運営を円滑に行うためには、固定費と売上のバランスを取り、運転資金の見込み額を正しく計算して資金を確保しておくのがポイントです。ここからは、運転資金の詳細な項目を取り上げ、解説します。

人件費

運転資金の代表的な項目の一つが人件費です。人件費とは、従業員に支払う費用全般を言い、たとえば下記のような項目が該当します。

  • 従業員の給料
  • 役員報酬
  • 法定福利費
  • 法定外福利費

法定福利費とは、「法律で支払いが義務付けられている」福利厚生費のことです。主に健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料、子ども・児童手当拠出金の6種類に分けられます。

法定外福利費は会社が任意で行う福利厚生にかかる費用を指し、たとえば、住宅手当や食事補助、社員旅行費、施設の利用料補助といったものが当てはまります。

仕入れ

仕入れとは、小売業者や消費者に販売する商品をつくる際に使用する材料費や、外注費、材料を購入する費用のことです。仕入れは運転資金のなかでも比重が大きい項目にあたります。仕入れとして計上する代表的なものを、以下に列挙します。

  • 仕入れた食材費
  • 原材料費
  • 商品を仕入れた費用
  • 材料の加工を外部に頼んだときの加工費
  • 外注費
  • 仕入れたときの送料

外注費は人件費と同一視されがちですが、項目が異なります。仕訳の際は間違わないよう注意しましょう。

店舗維持費

店舗維持費はビルや工場を会社が維持するのに必要となる費用を指します。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 家賃
  • 管理費
  • 共益費
  • 水道光熱費
  • 更新料
  • 修繕費
  • 看板使用料
  • 駐車場使用料

修繕費とは、建物や社用車が壊れたときに支払う修理費のことです。看板使用料は賃貸物件の看板を使うときに発生するお金ですが、購入した看板であれば広告宣伝費にあたるため注意してください。

販促費

商品やサービスを消費者に知ってもらうには、販売促進が鍵になります。販促費とは売上増加を狙って支払う費用の総称で、以下に例をまとめました。

  • 展示会の出品費用
  • 商品サンプルの制作費、配布にかかった費用
  • クーポン券の作成費
  • 販売手数料

一見、広告宣伝費と似ていますが、広告宣伝費はチラシや新聞、インターネットを介して商品・サービスを宣伝する経費を呼びます。

備品

業務のために日常で使う備品は運転資金に含まれます。備品とは、金額が10万円以上20万円未満のものです。備品は消耗品とよく似ていますが、備品は消耗品と違って固定資産になるため、原則として減価償却をします。
消耗品は文房具やコピー用紙、ガソリンといった消耗品購入費などを言います。なお、物品を購入した場合は、雑費で処理するケースもありますが、形として存在している物品や頻繁に発生する取引は消耗品とするのが一般的です。

備品と消耗品は混同しやすいため、詳しくは国税庁のホームページや税理士などに確認することをおすすめします。

通信費

通信費とは、電話料金や郵便代金、インターネット使用料といった費用の総称です。郵便代金であれば切手代、ハガキ代、宅急便代が該当します。また、ファックス代や有料放送の視聴料も通信費にあたります。

ただし、印紙や電話のリース、宣伝向けのダイレクトメールは通信費ではありません。スマートフォン(携帯電話)を会社とプライベート両方で使用している場合は、按分して通信費を計上できます。

開業資金中の運転資金を計算する流れ

開業資金中の運転資金を計算する流れ

運転資金がいくらかかるか正しく把握するには、手順に従って漏れがないように算出することがポイントです。次に、運転資金の計算方法を、3つのステップに分けて説明します。

1.運転資金の項目を洗い出す

まず、事業を運営する上で必要になる運転資金の項目が何か、洗い出してリストを作成しましょう。前述した通り、運転資金は家賃や人件費のように高額なもの以外にも、切手代やハガキ代といった少額のものも含まれています。少額であっても、年間を通してみると大きな額になることもあり得ます。
事業をスタートしてから思った以上に経費が嵩むことがないよう、細かな支出も丁寧に洗い出しましょう。

2.収支タイミングを考える

商品が売れてから入金されるまでにズレがあり、収支タイミングを考慮せずに運転資金の計算をすると、資金不足に陥る危険が高いです。たとえ黒字経営であっても、収支タイミングを見誤って資金がショートし、結果的に倒産してしまうケースも少なくありません。

売上金がいつ入るのか、いつ仕入代金を支払うのか、日数を押さえて運転資金の見込み額を出してください。

3.費用対効果を検討し開業資金を見積もる

運転資金の項目をリストアップしたら、何にいくら投資するか開業資金を見積りましょう。ポイントは高額なものと、妥協したくない項目を優先的に決めることです。使った費用に対し、売上がどれほど得られるかを予想し、費用対効果が低そうなものは投資額を抑えてください。

たとえば、新品の設備を買わなくても売り上げに差異がないのであれば、なるべく中古のものを購入するなど、費用を削減できないか慎重に検討して見積もりましょう。

調達する資金の額や自己資金の持ち合わせによって、開業資金の予算を決めます。開業資金にコストをかけすぎると開業後に使えるお金が減り、その結果、資金繰りに悩むリスクを高めるでしょう。強すぎるこだわりは捨てて、こだわりと妥協のメリハリをつけることが大切です。

開業資金と運転資金の目安

次に、業種別に開業資金の目安を解説します。開業資金は前述した通り、設備資金と諸費用の2種類です。設備資金には物件取得費、内外装工事費、設備費、Webサイト作成費といったものが含まれます。開業する業種によって、物件取得費が不要なものや設備費が高額なケースもあるため、事前に大まかな金額を押さえておきましょう。

居酒屋

開業資金の目安は平均で600万円前後ですが、場合によっては1,500万円かかることもあります。出店する立地や店舗の規模によって物件取得費が変動するので、人通りの多い好条件の土地を選べば、開業資金も高額になりやすいです。立地は客足に直結するため、商圏調査を行って念入りに戦略を立て選びましょう。

開業資金を安くしたいときは、居抜き物件の活用が有効です。

居酒屋の開業を検討している方には、こちらの記事がおすすめです。
脱サラで居酒屋を始めるには?よくある失敗と押さえるべき成功のコツ

ラーメン屋

開業に必要な資金は平均で1,000~1,500万円とされています。居抜き物件では300万円から開業が可能です。
ラーメン屋の開業資金の内訳は、主に物件取得費、内装工事費、店舗運営費の3種類に分けられます。

ラーメン屋の開業に興味がある方向けに、次の記事で開業準備や開業資金についてお伝えしています。
脱サラしてラーメン屋を開業したい!開業に必要な準備や資金額とは

農業

0から事業を開始するのであれば、開業資金の平均額は420万円前後と言われています。開業資金の主な使い道は、農地の取得や設備の購入費用などが挙げられます。
ほかの業種と違い、農業は作物が実ってから売れるまでに時間がかかるため、売上が入るまでの生活費を多めに工面しておくことが重要です。

脱サラして農業を始めたいのであれば、こちらの記事もあわせてご覧ください。
脱サラして農業を始めよう!脱サラ農家の始め方や体験談を紹介

開業資金は設備や物件を契約する費用に大きな影響を受けます。どれだけ良い設備にするか、どの場所なら集客できそうかなどを慎重に考慮しつつ、予算の範囲に納める工夫をしましょう。

運転資金は、少なくとも6ヵ月分ほど用意しておくのがおすすめです。ただし、業種によっては収支タイミングが大きく変わる点に、留意しなければなりません。たとえば飲食店では仕入れから売上が入るまでの期間は短いですが、農業ではかなりのタイムラグが発生します。資金の回収に時間がかかる場合、余裕を持たせて1年分の運転資金を準備しておきましょう。

運転資金の金額は「売上債権+棚卸資産-仕入債務」で簡単に求めることができます。

金額シミュレーションをして開業資金と運転資金の計画を練ろう

潤沢な運転資金を備えておけば、売上が少なくても、支払いが遅延するリスクを減らせます。運転資金の見込み額を正確に算出することは、安定した事業運営を目指すには欠かせないプロセスです。
開業時に必要な事務手続きや登記に使う諸費用については、業界の事例を確認しておきましょう。

今回ご紹介した運転資金の計算方法を参考に、自身の事業にいくらお金がかかるのか計算し、貯蓄が足りなければ、融資などの資金調達も有効な手段の一つです。

資金調達の詳しい方法や調達時のポイントは、以下の記事でお伝えしています。
開業資金の調達方法とは?調達ポイントやメリット・デメリット

よくある質問

Q 開業資金はいくら必要ですか? 回答を見る
Q 運転資金は何ヵ月分必要ですか? 回答を見る